パーキンソン病の治療 その2

その他の抗パーキンソン病薬

ドパミン放出促進薬

アマンタジン(商品名シンメトレルなど)は、もともとインフルエンザ治療薬として開発されたのですが、本剤を投与されたパーキンソン病患者の運動症状が改善されたことから、抗パーキンソン病薬としても認められるようになりました。NMDA型グルタミン酸受容体に対する拮抗作用(二つの要因が互いにその効果を打ち消し合うように働く作用)があり、これが抗パーキンソン作用の原因となっているという考えがあります。また神経保護作用もあるといわれていますが、まだ証拠はありません。アマンタジンはセレギリンと同様に覚醒させる方向に働くとされているので、朝、昼に内服する場合が多いです。初期パーキンソン病の運動障害の改善の他、運動障害を悪化させずにジスキネジアを改善させる作用があります。運動障害の改善のためには100~200mg/dayの投与で十分ですが、抗ジスキネジア作用を期待するには300mg/day以上の投与が必要となっています。腎排泄性の薬物のため、高齢者への投与の場合は減量が必要となっています。血液透析で除去されにくいのも特徴です。また高齢者、腎機能障害者に投与した場合、副作用である幻覚やミオクローヌス(※1)が現れやすいです。ミオクローヌスと振戦の区別が難しい場合もあります。その他の副作用としては網状皮膚斑(※2)などが知られている。

※1 ミオクローヌス:ミオクロニーもしくは、ミオクロニアは、自分の意思とは無関係な運動を起こす不随意運動の一つです。ミオクロニーけいれんは、突然の筋肉の縮小によって引き起こされ収縮の消滅によっても引き起こされます。

※2 網状皮膚斑:赤紫色の樹枝状(じゅしじょう)または、網目状の模様が主に下肢にみられるものです。皮膚の末梢循環障害による症状の一つで、リベドーとも呼ばれています。

生物学での研究が基盤となるバイオケミカル産業

    抗コリン薬

    アセチルコリン受容体のうち、ムスカリン受容体をブロックする薬剤です。最も古くから使用されている抗パーキンソン病薬で、19世紀から天然アルカロイドが用いられていました。1949年に合成薬トリヘキシフェニジル(商品名アーテンなど)が開発されて以来、様々な薬剤が使われています。主な抗コリン薬としては他にビペリデン(商品名アキネトンなど)、プロフェナミン(商品名パーキン)、メチキセン(商品名コリンホール)などがあります。2002年のガイドラインではあくまで補助的な薬物として位置づけられています。前立腺肥大、緑内障の患者では禁忌となっていて、幻覚、妄想、せん妄、認知症の悪化という副作用も認められるため認知症が認められる患者や高齢者ではあまり用いられていません。少量から開始し投与しますが、中止する場合も、ゆっくり少しずつ減量をします。フェノチアジン系抗ヒスタミン薬であるプロメタジン(商品名ピレチアなど)はパーキンソン病の振戦の緩和作用が知られています。中枢性抗コリン作用を持つためです。鎮静作用が強く不眠改善も期待でき薬です。

    COMT阻害薬

    COMT阻害薬中枢外に存在するドーパミン代謝経路の酵素のカテコール-O-メチル基転移酵素 (COMT) を阻害する薬剤です。末梢でのL-ドーパ分解を抑制して中枢への移行性を高めるための薬剤です。レボドパとの併用のみで用いられています。エンタカポン(商品名コムタン)およびトルカポンが開発されていますが、トルカポンは致死的な肝障害の副作用が見られたため、現在米国以外では使用されていません。日本ではエンタカポンが2007年1月に承認されています。ウェアリングオフ現象の改善に有効でありますが、ジスキネジア、精神症状の増悪が認められることがあります。

    日本で開発された パーキンソン病の治療薬

    ノルアドレナリン作動薬

    ドロキシドパは日本で開発されたノルアドレナリンの非生理的な前駆物質です。進行期パーキンソン病のすくみ足や姿勢維持障害に効果があるといわれています。また起立性低血圧にも効果があります。

    ゾニサミド

    元々は日本で開発された抗てんかん薬です。てんかんを合併したパーキンソン病患者の治療過程で、偶然にパーキンソン病の運動症状に対する効果のあることがわかりました。その後の大規模二重盲検試験では進行期パーキンソン病の運動症状を改善し、特に進行期のウェアリングオフ現象のオフ時間を短縮する効果が明らかにされました。その作用機序は、線条体でのチロシン水酸化酵素 (チロシンからドパミンを生成する反応の律速酵素) 産生を高めてドパミン合成量を増やすこと、ある程度のMAO-B阻害作用を持つことなどが考えられています。

    最先端の治療薬?!「抗体医薬品」!

      新しい抗パーキンソン病の薬

      他にも、すでに実用化されている薬や、臨床試験の段階にある薬。そして、既に発売されているため新薬ではないのですが、新しい概念と目的で作られた薬について。

      アデノシン受容体拮抗薬

      アデノシンA2a受容体に対する選択的拮抗薬イストラデフィリン (KW6002) は、低容量のレボドパとの併用で抗パーキンソン効果をあらわしました。さらに維持量のレボドパ投与に比べてジスキネジアを軽減し、レボドパの半減期を延長しました。アデノシンA2a受容体は線条体から淡蒼球に投射するニューロン上で多く発現しているので、ドパミンD2受容体・代謝型グルタミン酸受容体などと機能的な2量体を形成することもあります。この受容体への刺激はドパミンD2受容体の働きに拮抗しています。そのためA2a受容体を遮断することは、ドパミン刺激を介さずに抗パーキンソン作用を示すことになります。現在イストラデフィリンがアメリカと日本で承認申請中です。プレラデナントなどが臨床試験実施中です。

      グルタミン酸受容体作動薬

      ドパミン放出効果を持つアマンタジンは、グルタミン酸受容体のうちNMDA受容体の拮抗薬です。その他の受容体ではAMPA受容体拮抗薬の抗パーキンソン効果が期待されていました。AMPA受容体拮抗薬であるペランパネルは臨床試験の段階にまで進んでいますが、安全性は認められたのですが、パーキンソン病の運動症状を改善する効果は認められませんでした。このような状況で、日本の企業はペランパネルの抗パーキンソン病薬としての開発を断念しています。